三週間前「ママ、あのね、プールやめたいの」と怪獣くんが、不安そうにこちらを見つめながら、正座をして話しかけてきた。楽しそうに泳いでいたし、水が大好きなので、どうしたのかな?と思い、とりあえず様子を見るために、その日は休ませることにした。
一歳から続けてきた、唯一の習い事。オムツがはずれていなくても入れるスクールだったので、水を怖がらなければ良いと思って、親の独断で連れて行っていたスイミング。二年半経った今、急にどうしたのだろう?と驚いてしまった自分の気持ちを抑えるためにも、様子を見る時間が必要だった。
毎週、プールの日だけ怪獣くんが落ち着いているときに話しかけた。
「怪獣くん、今日はプールどうする?」と。
毎週、拙いながらも、ブレずに答えは同じだった。
◯「いつもー、ぶくぶくーってもぐるんだけどー、かおをこうしなきゃなんだけどー、ういちゃうんだよ。もぐってるんだけどー、ちがうっていうの。わかんないんだよー。」
→毎月テストがあって、顔をまっすぐ先生を見ながら数秒潜らなくてはいけない。先生には、数秒潜れてはいるといわれるが、浮いてしまって、その向きが違うと言われる。何が違っているのかわからない。
◯「バタバターってあしやるんだけどー、おともだちにぶつかっちゃうんだよ。すぐ、ぶつかっちゃうの。ひと、おおすぎるんだよー。みぎのほうにいったら、おともだちのところにもどされたんだよー。」
→バタ足のとき、人数が多いため、ぶつかってしまって、バタ足が出来ない。スペースがあいてるから、そこにいこうとしたら先生に元いたところに戻される。
眠いからいかない、ただ行きたくないというのではなく、しっかり自分の気持ちを拙い言葉で伝えてくれて、それが、三週間変わらなかった。
「せっかく続けてきたのに」
「今月分は払ってるから、せめて残りも行こうよ」
「今日くらいは行こうよ」
などなど、思うところはたくさんあって、気を緩めると口走りそうになる。
でも、全部親側の事情。
怪獣くんは、そんなこと考えてない。
ちゃんと説明してくれない、わからない。理解できないから、何度言われても出来ない。ということしか考えてない。
また、自分からやりたいと言われたときに反応できるような順応性や心の余裕をもっていればいいや、と最終的には、自身の気持ちを落ち着けることが出来た。
「退会するのであれば、しっかり先生にお礼を伝えなさい。ママは、お礼を伝えたい。だから、行こう」と誘って、退会手続きをし、感謝の意を述べてきました。
帰るとき、怪獣くんに、目の高さを合わせて話しかけました。
「これで、この場所でのプールには、もう来ません。二年半良く頑張りました。お疲れ様」と伝えたときの、彼の表情。
びっくりして、照れたような安心したような顔をして、急に抱きついてきたかと思ったら、「まーま!ママだいしゅきー!!!」と頬っぺたにキス!!
すごくすごく迷った三週間だったけど、これで、良かったんだと思えた瞬間でした。
親の気持ち、先生の気持ち、子どもの周りに存在する目に見えない声たち。それらに目を向けず、怪獣くんの心からの声を聞けた、怪獣くんの言葉を信じることができた、そう、信じることが、大切なんだなと思えました。
これからも、たくさん悩んで迷ったりするのだと思います。時には怒鳴ったりもしてしまうでしょう。それでも、今回迷って受け止めることを選んだ自分は、ママとして、すこーしだけ成長出来たかなと思えました。
ほんっと、怪獣くんには人としても課題を与えられております。
習い事をやめるタイミング。
それは、体裁を取り払って親子の会話を優先させた中で見出すものなのかもしれません。