第34回文学フリマにて販売されていた、花本武さんの著書『いくつかの条件』を読んだ。フリマは子連れでは厳しいかなと諦めていただけに別ルートにてゲット出来たのは幸いだった。
●装丁について
あぁ、花本さんだ。その一言に尽きる。
厚紙に無造作に書かれたタイトル。シールで貼ってある著者名と出版社名。これがいい。なんだかチグハグしているように見えるけれど、これこそ花本武さんの人となりだと手にとって見て感じた。
装丁については出版社さんから丁寧に説明していただいた。
「厚紙に、花本さんによる題字を一枚いちまいシルクスクリーンで刷りこんでいるんだよね。
本体自体が赤くて、それに表紙・裏表紙と厚紙をボンド貼りつけしています。」細かい。
花本さんは走り出したら止まらない。燃料が切れない未来の乗り物のごとく延々と走り去ってしまうから。手綱を握る何かがなくては。それがこの色だと感じた。赤は花本さんにぴったりの色だ。褒められたい、目立ちたい、戦隊ヒーローもののリーダーといえば赤(レッド)よね。無造作but計算されてる。
●目次
これまた「らしい」としか言いようのない。開いて唖然からの爆笑。花本さんの感情そのままじゃないか。囲い、びっくりマーク、なみなみ線、これは!というところは分かりやすくなっている。面白い。魅せるなぁ。カッコいい。
●内部
花本さんの言葉は「人に見られる」ことを常に意識して書いている。読めーーー絶対面白いから読めーそして買えーという「呪い」否「想い」が込められている。強気。だけど、優しい。もしかしたら傷つきやすいのかもしれない。うさぎのように寂しがりなのかもしれない。子鹿のようにプルプル震えていたりするのかもしれない。自分を曝け出すって勇気がいる。それ以上にレッドとしての、もはや使命感で突き進んでいるのかも。そしてふと不安になるのかも。そんな文章。
書評面白い。尊敬。普通の書評じゃなくて、花本さんの生きる世界とリンクした書評が面白い。やっぱり中身が面白くてユーモアがある人魅力的よね。
日記最高。昔書いていた日記捨てちゃったな。恥ずかしすぎて。でもこういう書き方なら見られてもいいなって思う。書かないけど。花本さんの家族がブレイディみかこさんの家族と私の中でリンクする。子も人間。色んな問題を共有するって大切だ。我が家の怪獣くん、なかなか的確なことを言うようになってきた。自分なりの解答を見つけて発言し承認し合うって大切。
●別冊
これぞ真髄。
これぞ花本武。
人の目なんてくそくらえ!
人の感情なんてしったこっちゃない!
これが花本武だーーーーー!!!!!!!
冊子にしたからこその、熱い熱苦しい感情が流れてきた。手に取っただけでこれ。読んだらどうなるんだ?
読んだ。言いたいことぜんっぜん分からん!今までは改行されていて読みやすく構成されていたのに、全くない。文字の羅列羅列羅列!!!!!
ブックンロールで見たときの花本さん、そのまま。1ページ終わるごとに紙が下へ放られる音がする。無音なのに。息遣い吐息言葉のラストを吐き捨てる空気の音がする。無音なのに。スポットライトが見える。誰もいない部屋なのに。
花本武ここに参上!!!
ははぁ〜〜〜土下座
ってな映像が溢れた。
私は、というと。
えぐられました。心が。
このままでいいのか、このままじゃだめだ。行動あるのみ。そう思った。
何か問題が起きたら、今度こそ周りに助けを求めよう。今度こそ「助けて」と言えばいい。
花本武の文章には、相手を鼓舞する力があると私は思う。
追記
花本武だけではない、十七時退勤社の人々がいたからこその一冊だと思った。
いかに魅力的に
いかに伝えられるか
言葉を空気を想いを花本武というかけがえのないひとりの人間を
どうしたら
どうやったら
伝えられるだろう
子を大切に思う気持ち
アートを大切にする生き方
想いを形にする生き方
受け止める生き方
全てを予算内で伝えきるにはどうすればいい
その想いが十七時退勤社スタッフだからこそここまで込められたのだと思う
私も人とこうやって関わっていきたい
少しの寂しさと羨ましさ
それ以上の優しさが入り混じる
あったかい一冊
見つけたら手に取ってみてほしい
西荻窪にある今野書店で1ヶ月くらい展開中とのこと
行ってみて欲しい