「短い時間でさらっと読める、あまり重くない本ないかな」
いつものように図書館へ行き本を探していた時のことです。
単行本の重さが好きで、いつもはそちらの棚ばかり見るのに今回は何故か目が文庫にばかりいく。(思えば、ワラシに導かれたのかも)
先日ものすごい勢いで文章を紡いだので、今回は軽めがいいな、なんて思っていたのですが、吸い寄せられたのはこちらの本。
表紙だけ見ると求めていた「軽め」の本ですし、内容も読みやすくて頭に入りやすいので、スッと頭に定着してくれる。
けれど。
私は主人公の本緒啓(ひらく)くんと同じとは言わないけれど、それなりに本屋での苦しかった思い出があるので(嬉しいことの方がもちろん多いのですが、悲しい出来事は時に100の嬉しいことを消し去るくらいのパワーがあるのです)感情移入しすぎて涙腺崩壊してしまいました。
本が好きで、本屋が好きな出版社の営業さんに励まされた言葉も似ていて、本屋さんに入るのが怖くなったり本が読めなくなったり本の輝き、棚の輝きが感じられなくなってしまう感覚も近いものがあったのです。
今まで好きだった本屋さんの棚が前はキラキラして見えたのに、本が並んでいるだけにしか見えてなかったり本が呼んでくれる感覚もなくなってしまっていました。棚が壁のように見えてしまっていたのです。
そういう負の心を乗り越えていくときに、ワラシ(書店限定、座敷童)や義己やお客様の存在が大きく関わってくるのが、このお話の面白いところ。ほんとにそうだから。
不思議な展開がありつつ、周囲の人の感情に振り回されながら「書店員」として「啓」として成長していく姿に、気付くと手を握りしめて応援していたくなりました。
義己の「言葉にせずとも伝わっているよ」と感じられる安心感や、存在感。登場するだけでうるっとしちゃう。
ずっと本屋を第二の家にしたいと思い続け踏ん張ってきたのは、こういう誰かの存在でありたかったからなんだと思い出させてくれた本。
同時にラストのシーンで「繋いでいく」ことも知ったのです。
人間は歳をとるし、それは変えられない。
「自分」が「伝え」「繋いで」行くことは何かしらの形で出来るかもしれない。そう思えた本でした。
本屋という場所がなくても。
場所にこだわらなくても。
ブログに文章を書いたりしたり、何かしらの形で誰かの心に届くように動くことは出来るのかなと思いました。
やっぱり私は本が本から流れてくる感情が好きなんだ!!!
最後に学校へ行けなくなってしまっていた、あの頃の自分に伝えたい一文があります。文中より抜粋させてください。
p129義己から絵里香へ送る言葉
「心を傷つけられるだけなら行くことはない。逃げることは負けじゃない。自分を守ることが一番大事なんだ」
学校へ行けずに苦しんでいる人。
会社に向かおうとするたびに身体が拒否反応をしてしまう人。
生きている実感がなく「無」の心になってしまった人。
これら全て私自身に当てはまっていたのですが、似たような境遇の方が少しでも(読める力のある時に)本を読み心があったかくなれますように。
切実な想いを胸に抱いて本日の感想を終わりにしたいと思います。