本屋で待つ
この「待つ」という言葉が、本書の全てを表現しているといっても過言ではないと思う。「待つ」も大切だが「本屋」というキーワードも核となっている。
待つの意味合いは人それぞれ感じ方が違うと思う。
本書を読んで私が感じた想いは5つある。
①人の(それぞれの)ペースを待つ
②人の心がとけるまで待つ・・・雪解けのようにゆったりと待ち春が来る
(ここでの春は笑顔、気力、自己肯定感、自信など)
③佐藤さんが相手に寄り添えるタイミングを待つ
④人の話を最後まで聞いて受け止めたと相手が感じるまで待つ
⑤本屋が第2の家であるように、いつでも待つ「おかえり」「ただいま」と言い合える環境づくり
もちろん他にも込められた想いはあると思う。
私にとって強く感じたメッセージは「人には家族でも学校でもない、自分が認めてもらえる場所」「そこに必要とされる感覚」「自分が自分でいられる場所」が必要なのだということ。
そして、山の中の本屋さんで経験した全ての事が、1つの答えとなりそうであること。本屋じゃないときっと気付けなかった。「本屋」だから。「人の心がさらけ出しやすい場所」だから。佐藤さんが丁寧に丁寧に「1人1人の気持ち」をすくいあげて大切に向き合ってきたから気付けたことが多いのではないかと思った。
佐藤さんの本屋だけじゃない。
都心であっても忙しい書店でも、少し離れた本屋であっても、佐藤さんは同じことをするのだろうなと思う。その場所に必要とされていることを聞いてすくいとり、そして実行する。立ち止まり考えながらも、自分の心に噓なく突き進む。笑顔とわくわくとお客様の幸せのために。
こんなにも、人の幸せを願える人を他に知らない。
ニコニコしていても心で思っていることは違ったりすることだってある世の中。佐藤さんは嘘をつかない。忘れることはあっても(笑)
お客さまの要望を聞いてみて
お客様は本屋という場所で、すべてを見せてくれている
良く観察すると見えてくる
人に対しても同じ
人のペースを大切にしよう
人の心を大切にしよう
佐藤さんの想いが込められている本書は、佐藤さんのお話を夏葉社の島田さんが聞いてまとめた本なので、島田さんからの感銘の気持ちが強く感じられる。
島田さんの文章は優しく温かく、実直で届けたいという想いが強い。「売れてほしい」よりも強く感じる。
私はこの本が、きっとこれから本屋を始める人にとって、本屋は関係なく少し人生に疲れた人にとって何年経っても色褪せず届く本だと信じている。
真似をするところはしても良いと思う。
ただ、忘れてはいけない。
来店してくださる人たちの声を。
私はもう本屋じゃないけれど、書店を第2の家にしたいとずっと願ってきた。
苦しかったり辛かったりしたときお店に来て「何となく明日も頑張ろう」と思ってもらえるような接客やお店作りをしたいと思ってきた。1人の力では作れないので、たくさん相談したり話し合ったりしてコミュニケーションを大切にしてきた。
でも、続けることは出来なかった。
佐藤さんはずっとずっと後を継いでから踏ん張り続けて「あとは頼んだ」とバトンタッチした今でも出来ることを探して突き進み続けている。
続けることは、とても難しい。
ぶれずに進むことも、とても難しい。
かっこいいなと思った。
人の心を救いながら、自分の道を突き進む。
本書を読み、色んな感想が浮かぶ。
ひと言で表現するなら「ウィー東城店行きたい!」だ。
髪切ってもらって、メイクしてもらって、スタッフさんに接客してもらいながら本選んで本買って、手品してもらって、民宿さとうで泊まる。最高だわ。
夫を説得できるか否かが問題だ。
決して明るいだけの本ではないけれど、読み終わって自分の心に落とし込めたとき、新しい道が見つかる、そういう気持ちにさせてくれる1冊だった。